1. 何がどう変わったか ── 上限価格の全履歴

公表

適用期間(実需給日)

複合・一次・二次①

二次②・三次①

三次②

2024/03/15

2024/04/01 〜 2026/03/13

19.51円

7.21円

上限なし

2026/02/05

2026/03/14 〜 2026/08/31

15.00円

7.21円

上限なし

2026/07/30

2026/09/01 〜 当面の間

10.00円

7.21円

上限なし

単位はすべて 円/ΔkW・30分。出典: EPRX「需給調整市場のΔkW上限価格について」2026年7月30日更新版。

見落とされやすいのは、15円の時代は2026年3月14日から8月31日までの約5.5か月しかなかったことだ。約2年続いた19.51円から見れば、この半年で天井はほぼ半分になった。なお本記事では意図的に「年度」で書いていない。上限価格の適用は実需給日の期間で定義されており、年度で丸めると誤りになるためである。

2. なぜ下がるのか

上限価格は「異常な高値約定を防ぐ安全弁」であると同時に、事実上の価格シグナルとして機能してきた。参入が薄かった時期には上限近辺での約定が珍しくなく、蓄電池の事業計画も上限水準を前提に組まれがちだった。国の電力安定供給ワーキンググループ(第4回・2026年7月14日)で蓄電池の収益性を踏まえた適切な水準が議論され、これを受けて EPRX が7月30日に10円への引き下げを確定させた。

背景にあるのは供給側の急増だ。三次調整力②における蓄電池の平均落札単価は、参入が本格化した結果、2024年度の109.43円から2025年度は19.31円まで急落した。同じ2025年度のVPP(DR等)の平均は53.59円で、蓄電池がVPPを下回る逆転が起きている(いずれもEPRX約定結果にもとづく当サイト集計・円/ΔkW・30分)。「上限の引き下げ」と「競争による単価下落」は別々の現象ではなく、同じ市場成熟の両面と読むべきだろう。

3. 蓄電池事業への意味

  • ΔkW収入の天井が下がる: 一次・二次①・複合で上限約定を前提にした計画は、19.51円だった期間と比べ単価が約半分になった。応札戦略は「上限で待つ」から「限界費用で取りにいく」へ。
  • 商品間の選択が重くなる: 上限なしの三次②は単価が急落し、上限ありの一次・二次①は天井が低下した。ΔkW(需給調整)・kW(容量市場)・kWh(卸市場)の組み合わせ最適化が収益設計の中心になる。
  • 「当面の間」は固定ではない: 過去2回の改定はいずれも公表から適用まで1〜2か月だった。次の見直しも同じ経路(ワーキンググループでの議論 → EPRX 公表)で来る可能性が高い。

4. あわせて読む

※本記事は公表資料にもとづく編集部の整理です。応札・契約の判断は必ず一次情報をご確認ください。