需給調整市場は応答速度の速い蓄電池が強みを発揮する市場ですが、参加には参加申込・事前審査・応札・運用・精算の各段階で複雑な手続きがあります。本記事では、需給調整市場参加の実務プロセスを段階別に解説します。
1. 全体プロセス
需給調整市場への参加は、以下の段階を経ます。
- 参加申込(EPRX への取引会員資格審査 → 合格後に属地一般送配電事業者へ事前審査申込)
- 応札(全商品とも実需給の前日。入札受付は前日11時30分〜14時)
- 落札・計画提出
- 運用(指令応動)
- 精算(ΔkW の約定料金+調整電力量料金)
2. 参加申込と事前審査
蓄電池リソースを需給調整市場で活用するには、まず EPRX(一般社団法人 電力需給調整力取引所)に参加申込を行い、取引会員資格審査に合格する必要があります。合格後、参加予定エリアの一般送配電事業者に事前審査を申し込みます。事前審査で登録する主な項目:
- リソースID・所在地
- 定格出力(MW)・容量(MWh)
- 応動性能(応動時間・継続時間)
- 運用形態(自社運用 or アグリゲーター経由)
- 系統連系状況
3. 商品の種類と応札
需給調整市場には複数の商品があります。主に応動時間の違いで分かれます。
- 一次調整力(FCR):応動10秒以内・継続5分以上(オフライン監視の場合は応動30秒以内・継続時間の設定なし)
- 二次調整力①(S-FRR):応動5分以内・継続30分
- 二次調整力②(FRR):応動5分以内・継続30分
- 三次調整力①(RR):応動15分以内・継続30分
- 三次調整力②(RR-FIT):応動60分以内・継続30分
(EPRX「需給調整市場の商品要件と取引スケジュール(第6版)」2026年3月13日の値)
応札はこれらの商品ごとに、ΔkW(調整できる容量)の単価と量を、30分コマ単位で提示します。
4. 落札後の運用
落札後、発電販売計画(30分ごとの稼働計画)を電力広域的運営推進機関に提出します。運用中は、属地エリアの一般送配電事業者からの指令に応じて応動する義務があり、応動できない場合はペナルティ料金の対象になります。
5. 精算の仕組み
精算は2軸で行われます。
- 約定料金(ΔkW):30分コマごとに、ΔkW約定単価 × ΔkW約定量
- 調整電力量料金:実際の上げ/下げ調整電力量に、登録済みのV1単価/V2単価を乗じた額
決済の対象はこの2つに加えてペナルティ料金と売買手数料があります(取引規程 第46条)。約定料金は約定時点で確定する安定的な収入、調整電力量料金は実際の指令応動量で変動する収入です。
6. アグリゲーター経由の参加
単独参加が困難な場合、リソースアグリゲーター(特定卸供給事業者)に運用を委託する選択肢があります。アグリゲーターは複数リソースを束ねて市場参加し、運用代行手数料を取ります。
7. 三次調整力②と再エネ予測誤差
三次調整力②は、太陽光発電の予測誤差を補正する目的で使われます。
8. 留意点
- 応動性能の保証が事業継続の鍵
- 運用最適化EMSの精度が収益を左右
- 容量市場・JEPXとの優先順位設計
- 計量・通信機器の品質確保
- 系統運用者・アグリゲーターとの良好な関係
まとめ
- 需給調整市場参加は参加申込から精算まで5段階
- 5商品(一次・二次①②・三次①②)の特性を理解
- ΔkW の約定料金(安定)+調整電力量料金(変動)で精算
- アグリゲーター経由が新規参入の現実解
関連
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出典
一般社団法人 電力需給調整力取引所(EPRX)「取引ガイド(全商品)」(第10版、2026年7月1日)
一般社団法人 電力需給調整力取引所(EPRX)「需給調整市場の商品要件と取引スケジュール(第6版)」(2026年3月13日)
一般社団法人 電力需給調整力取引所(EPRX)「取引規程(需給調整市場)」(2026年7月1日実施)
資源エネルギー庁「需給調整市場について」(制度検討作業部会・電力安定供給WG 提出資料)
訂正履歴
2026年10月22日 訂正直す前:
- 商品の分け方を「応答速度・継続時間の違いで分かれます」とし、一次調整力を「応動10秒以内・オフライン監視は30秒以内・継続5分以上」、値の時点を「2026年3月13日の商品要件見直し後の値」と記載
- 「決済の対象はこの2つに加えてペナルティ料金があります(取引規程 第46条)」と記載
- 7節に「再エネ比率の上昇とともに需要が拡大しています。蓄電池事業者にとって最も重要な収益源の一つです。」と記載
- まとめに「三次調整力②が最重要収益源」と記載
直した後:
- 「主に応動時間の違いで分かれます」とし、一次調整力を「応動10秒以内・継続5分以上(オフライン監視の場合は応動30秒以内・継続時間の設定なし)」に修正しました。何が見直されたかを一次資料で確認できなかったため、時点は「EPRX「需給調整市場の商品要件と取引スケジュール(第6版)」2026年3月13日の値」に改めました(同資料の商品要件の表に合わせました)
- 「ペナルティ料金と売買手数料があります」に修正しました(取引規程 第46条の決済の対象に売買手数料が含まれるため)
- 需要の拡大と「最も重要な収益源の一つ」の記述を削除しました(裏づけとなる一次資料を確認できなかったため)
- 「三次調整力②が最重要収益源」の箇条を削除しました(裏づけとなる一次資料を確認できなかったため)
2026年9月30日 訂正直す前:
- 手順を「事前登録(一般送配電事業者へのリソース登録)→ 応札(日次・週次など)→ 落札・運用計画提出 → 運用(要請応答)→ 精算(kW価値+kWh価値)」とし、「まず一般送配電事業者(旧一電)への登録が必須」と記載
- 商品を「二次調整力①(FRR-H相当)5分以内応動・数十分継続/二次調整力②(FRR-L相当)5分以内応動・長時間継続」等と記載
- 「kW価値(容量に対する対価)と運用条件を提示」「運用計画を一般送配電事業者に提出」「系統運用者からの要請に応じて応動」「kW価値/kWh価値で精算」と記載
- 出典欄に 一般送配電事業者各社「需給調整市場参加要綱」・資源エネルギー庁「需給調整市場の運用」を記載
直した後:
- 手順を「参加申込(EPRX の取引会員資格審査 → 合格後に属地一般送配電事業者へ事前審査申込)→ 応札(全商品とも実需給の前日。入札受付は前日11時30分〜14時)→ 落札・計画提出 → 運用(指令応動)→ 精算(ΔkW の約定料金+調整電力量料金)」に改めた
- 商品は「一次調整力(応動10秒以内・オフライン監視は30秒以内・継続5分以上)/二次調整力①(S-FRR)応動5分以内・継続30分/二次調整力②(FRR)応動5分以内・継続30分/三次調整力①(RR)応動15分以内・継続30分/三次調整力②(RR-FIT)応動60分以内・継続30分(2026年3月13日の商品要件見直し後の値)」
- 「ΔkW の単価と量を30分コマ単位で提示」「発電販売計画(30分ごとの稼働計画)を電力広域的運営推進機関に提出」「属地エリアの一般送配電事業者からの指令に応じて応動」「決済は約定料金・調整電力量料金・ペナルティ料金(取引規程第46条)」
- 発行元で確認できない資料名「需給調整市場参加要綱」を削除し、資源エネルギー庁の資料名を「需給調整市場について」に改めた
2026年9月22日 訂正直す前: 出典に電力広域的運営推進機関「需給調整市場 業務マニュアル」(発行元で確認できない資料名)と記載
直した後: 一般社団法人 電力需給調整力取引所(EPRX)「取引ガイド(全商品)」(第10版、2026年7月1日)に訂正
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