系統増強(Grid Enhancement)は、送配電網の容量・性能を拡張・改良する設備投資の総称で、新規送電線・変電所増設・既存設備のリパワーリング・保護システム高度化・連系線増強等を含みます。再エネ大量導入・蓄電池本格普及・電化進展に伴う送配電容量需要の急速な増加に対応するため、各電力会社・OCCTOが長期広域系統整備計画に基づき計画的・大規模に推進する戦略投資領域です。

系統増強の主要類型は次の通りです。第一に、新規送電線建設で、新規発電所・需要地への送電線整備、特に再エネ大量導入エリア(北海道・東北・九州沖の洋上風力等)での海底直流送電(HVDC)整備。第二に、既存送電線の容量拡大で、ダブルサーキット化・電圧昇圧・架線張替え・冷却機能強化等。第三に、変電所増設・拡張で、新規バンク追加・既存バンク容量拡大・新規変電所建設、特に大需要地・データセンター集積地・再エネ集中エリアで重点。第四に、地域間連系線増強で、北海道・東日本・東北・東京間、東日本・西日本(FC:周波数変換設備)間、関西・中部間等の連系容量拡大、洋上風力・大規模再エネの全国融通基盤。第五に、配電網のスマート化で、自動電圧調整・配電潮流最適化・配電VPP・センサー設置・ノンファーム接続対応・サイバーセキュリティ強化。第六に、保護システム高度化で、デジタル保護リレー・IEC 61850対応・ROCOFリレー・適応型保護整定の本格普及。第七に、HVDC・新型送電技術で、海底直流送電・FACTS(柔軟交流送電システム)・SVC・STATCOM等の本格活用。

蓄電所事業との関係は包括的です。第一に、接続検討・連系工事費負担金で、系統増強規模・コスト負担が事業性を直接決定、特に大型案件・系統制約地域では数十億〜100億円規模の負担となるケース。第二に、ノンファーム接続・コネクト&マネージで、系統増強完了前の暫定的な連系制約付き接続、出力制御リスクとの引き換えで早期運開実現。第三に、長期広域系統整備計画への蓄電池組込で、計画段階からの蓄電池の役割位置付け、整備計画と連動した蓄電所開発戦略。第四に、地域間連系線運用拡大で、エリア横断の市場アービトラージ機会、洋上風力・大規模再エネとの統合運用機会。第五に、配電網のスマート化で、配電VPP・分散リソース統合・地域マイクログリッドへの蓄電池組込機会。第六に、HVDC・洋上風力連系で、新規大型蓄電所開発機会、洋上風力併設・陸上連系点近傍配置の戦略的選定。第七に、TSO・OCCTOとの連携で、系統増強計画への参画、ノンファーム接続地点情報の活用、系統運用協力。

2030年に向けて、系統増強投資は再エネ大量導入・脱炭素化加速・電化進展で大幅な拡大が見込まれます。第一に、長期広域系統整備計画の本格実装で、年間1兆円超の投資規模、地域間連系線の大幅増強、洋上風力連系のためのHVDC整備。第二に、北海道・東日本連系強化で、北海道の風力・太陽光大量導入を首都圏に送電する連系容量拡大。第三に、東日本・西日本FC増強で、50Hz/60Hzエリア間の融通能力拡大。第四に、洋上風力大規模連系で、秋田・青森沖・千葉県銚子沖・長崎県五島沖等の促進区域での海底直流送電・陸上連系設備整備。第五に、配電網のスマート化・ノンファーム接続本格普及で、混雑系統での柔軟運用拡大。第六に、AI・デジタル活用で系統増強計画・運用の高度化、デジタルツイン基盤。第七に、系統増強費用の社会的負担分担議論、託送料金・受益者負担・公的支援の最適バランス。蓄電所事業者にとって、系統増強動向の継続把握、TSO・OCCTOとの連携、業界団体経由の制度議論への参画が、用地選定・接続戦略・市場機会捕捉の重要な前提条件となります。

主な出典・参考情報

  • JEAC9701 系統連系規程(電気協同研究会)
  • 各電力会社(一般送配電事業者)技術要件・系統連系協議書類
  • 電気設備技術基準・解釈(経済産業省)
  • OCCTO 広域系統長期方針・系統情報公開ガイドライン
  • 高調波抑制対策ガイドライン(資源エネルギー庁告示)
  • IEC 61850・IEEE 1547等の国際標準

関連:実データで確認

蓄電所ネット では、全国9社・6,507変電所の系統空き容量データを統合提供しています。