周波数変換設備(Frequency Converter, FC)は、異なる周波数を持つ電力系統間で電力を変換・融通する設備です。日本では東日本(北海道・東北・東京エリアの50Hz)と西日本(中部・北陸・関西・中国・四国・九州・沖縄エリアの60Hz)が異なる周波数で運用されているため、両エリア間の電力融通には周波数変換が必要となります。世界でも珍しい構造で、東京・中部エリア間を結ぶFC設備が、日本の電力システム運営の重要なインフラとして機能します。

日本の主要FC設備の構成は次の通りです。第一に、佐久間周波数変換所(電源開発、静岡県)で、運用容量30万kW、1965年運開、最古のFC設備。第二に、新信濃変電所(東京電力、長野県)で、運用容量60万kW、1977年運開・後に増強。第三に、東清水変電所(中部電力、静岡県)で、運用容量30万kW、2006年運開。第四に、飛騨信濃直流幹線(電源開発・東京電力、長野県)で、運用容量90万kW、2027年頃運開予定の新規HVDC設備。これらを合計して2024年現在の総運用容量約120万kW、増強計画で2027年頃に300万kW級に拡大予定です。技術方式は、サイリスタ整流器・インバータを用いるHVDC方式が標準で、最新設備ではIGBT・自励式コンバータ(VSC:Voltage Source Converter)も採用されます。

蓄電所事業との関係は重要で、FC運用が東西エリア間の事業環境を左右します。第一に、エリア間市場アービトラージで、東日本・西日本のJEPXエリアプライス差を活用した蓄電池運用、FC容量制約下での裁定機会。第二に、需給調整市場の広域運用で、OCCTOの広域需給調整システム経由の調整力調達、FCを通じたエリア横断調整力提供。第三に、容量市場の広域評価で、東西エリア横断の供給力確保、戦略的蓄電所配置。第四に、出力制御回避で、九州・東北等の太陽光余剰電力を東京エリアに送電する経路、FC容量がボトルネック。第五に、緊急時融通で、需給逼迫・大規模事故時のエリア間支援、FC容量がレジリエンス価値を決定。第六に、長期戦略で、FC増強計画(2027年頃に300万kW級)を踏まえた事業地理戦略、エリア横断の事業ポートフォリオ設計。第七に、洋上風力大規模連系との関連で、北海道・東北沖の風力電力を首都圏・西日本に送電する基盤、FC増強の戦略的重要性。

2030年に向けて、FC増強・運用は再エネ大量導入・全国最適化の中で更に重要性を増します。第一に、飛騨信濃直流幹線(90万kW)の運開で、東西エリア間融通能力の大幅拡大。第二に、東清水・新信濃の追加増強検討で、運用容量の更なる拡大、長期広域系統整備計画での位置付け。第三に、HVDC技術の進化で、自励式コンバータ・モジュラーマルチレベル変換器(MMC)等の本格採用、効率・運用柔軟性の向上。第四に、エリア間取引・需給調整市場・容量市場の広域運用拡大で、FC容量を最大活用した市場機能高度化。第五に、サイバーセキュリティ・運用継続性確保で、FC設備の信頼性・冗長性強化。第六に、洋上風力大規模連系との統合で、北海道・東北沖洋上風力の全国融通基盤としてのFC機能拡充。第七に、AI・予測モデル活用で、FC潮流予測・最適運用・デジタルツイン基盤。蓄電所事業者にとって、FC運用動向の継続把握、エリア横断戦略の立案、業界団体経由の制度議論参画が、長期事業戦略・社会的価値創造の重要な要素となります。

国際比較の観点では、欧州ENTSO-E(汎欧州系統運用機関)・米国各ISO/RTO・豪州AEMO等の系統連系制度・運用ノウハウが、日本の制度改善の参考として重要です。グリッドフォーミング機能・擬似慣性供給・FFR・分散リソース統合等の先進機能は、海外で先行実装され、日本での本格普及への道筋を示します。海底直流送電(HVDC)・電力エレクトロニクス技術・サイバーセキュリティ標準(NERC CIP・IEC 62443等)の進化、グローバル機器メーカー・運用事業者との連携、国際標準化への参画が、系統連系領域の中長期競争力を支えます。

主な出典・参考情報

  • JEAC9701 系統連系規程(電気協同研究会)
  • 各電力会社(一般送配電事業者)技術要件・系統連系協議書類
  • 電気設備技術基準・解釈(経済産業省)
  • OCCTO 広域系統長期方針・系統情報公開ガイドライン
  • 高調波抑制対策ガイドライン(資源エネルギー庁告示)
  • IEC 61850・IEEE 1547等の国際標準