中国メーカー(Chinese Manufacturer、Chinese Vendor)は、中国本土に拠点を持つ蓄電池・PCS・電気機器の製造企業で、2020年代の系統用蓄電所機器市場で支配的シェアを占めている。日本市場でも蓄電所事業の機器調達における主要選択肢となっており、品質・コスト・供給力の優位性と、経済安全保障・地政学リスクのトレードオフが事業設計の重要論点となっている。

主要な中国系蓄電池メーカーは、(1)CATL(寧徳時代新能源科技、世界シェア約37%、本社福建省寧徳市、創業2011年、時価総額世界トップクラス)、(2)BYD(比亜迪、深セン市、車両・電池統合事業、世界シェア約16%)、(3)EVE Energy(億緯鋰能、広東省恵州市、円筒・角形・リン酸鉄)、(4)Sungrow(陽光電源、PCS世界トップシェアの一角、安徽省合肥市)、(5)Hithium(厦門海辰新能源科技、福建省厦門市、急成長LFPメーカー)、(6)CALB(中創新航、福建省福州市、車載・据置両領域)、(7)Gotion(国軒高科、安徽省合肥市、Volkswagen資本提携)、(8)SVOLT(蜂巣能源、河北省、Great Wall系)、で寡占状態にある。

中国メーカーの優位性は、(a)規模の経済(年間数十GWh級の生産能力)、(b)原材料サプライチェーン統合(リチウム・ニッケル・コバルト・グラファイト・正極材・負極材・電解液の上流・下流統合)、(c)大規模R&D投資(CATLは年間1兆円超のR&D予算)、(d)製造コスト競争力(人件費、エネルギーコスト、政府支援)、(e)製品仕様の継続改善(314Ah・340Ah級セル、CTP/CTR/CTC、液冷標準化)、(f)グローバルサポート(日本含む各国での営業・技術支援拠点)、などである。

日本市場での論点は、(i)品質・安全性(一流メーカーは国際認証取得済、UL9540A・IEC 62619等への対応)、(ii)保証スキーム(メーカー保証 vs 現地代理店保証、保証実行性の評価)、(iii)通関・輸送(UN 38.3対応、海上輸送制限)、(iv)アフターサービス(補修部品調達、技術サポート、ファームウェア更新)、(v)経済安全保障観点(基幹インフラ事業指定、外為法投資審査)、(vi)為替リスク・地政学リスク、(vii)業界内での代替調達戦略(韓国系・国産・東南アジア生産)、と多面的に評価される。

中長期的には、米国IRA法・EUバッテリー規則等の影響で、(A)中国メーカーの第三国(東南アジア、北米、欧州)への現地生産シフト、(B)非中国系メーカー(韓国LG Energy Solution、Samsung SDI、SK On、米Tesla、米Powin、米Form Energy等)の市場シェア拡大、(C)日本系メーカーの国内・海外生産能力増強、(D)多元化サプライチェーンの構築、が進む見通しで、蓄電所事業者はサプライヤーポートフォリオの戦略的選択を継続的に見直す必要がある。

グローバル展開の観点では、米国・欧州・東南アジア・中東等の海外市場展開機会、海外電池メーカー・PCSメーカー・運用事業者・インフラファンドとの戦略提携、国際標準化機関(IEC・IEEE・ISO)への参画、海外プロジェクトファイナンスの組成、各国規制(FERC・NFPA 855・EU電池規則等)への適合が、中長期事業戦略の重要要素です。日本企業の海外展開支援として、JBIC・JICA・JOGMEC等の公的機関との連携も活用が拡大しており、グローバル蓄電所市場での日本企業のプレゼンス確立が、業界の中長期成長を支えます。

主な出典・参考情報

  • 各社IR資料・有価証券報告書・統合報告書
  • 業界団体資料(JESIA、JPEA、JWPA、電池工業会等)
  • BloombergNEF・IHS Markit S&P Global・Wood Mackenzie等の調査レポート
  • 経済産業省・資源エネルギー庁 産業政策資料
  • IEA(国際エネルギー機関)World Energy Outlook
  • TCFD・ISSB・GRI等のサステナビリティ情報開示基準