LCOEで見ると、最も安い電源は再エネ

発電コストの指標 LCOE(均等化発電原価)で電源を並べると、いま最も安いのは再生可能エネルギーです。米エネルギー省 NREL の ATB(2024年版、$/MWh、米国前提)では次の序列になります。

  • 陸上風力:20.7/太陽光(ユーティリティ):43.2(最安グループ)
  • 地熱:70.2/火力(ガス・石炭、概数):約40〜80
  • 水力:115.0/原子力:126.6/バイオマス:195.5(高コストグループ)

陸上風力と大規模太陽光は、原子力や水力の半分以下のコストです。これはNREL ATBによる米国前提のコスト序列で、日本の実コストそのものではありません(相対比較の参考として用います)。

ところが、日本の電源構成は真逆に近い

では日本で実際に使われている電源(2025年・発電量シェア)はどうか。経済産業省の電力調査統計をもとに見ると、コストが安い電源ほど、むしろシェアが小さいことが分かります。

  • 火力:73.7%(最大)
  • 原子力:11.2%/水力:9.5%
  • 太陽光:4.1%/バイオマス:4.1%/陸上風力:1.3%/地熱:0.2%
  • (再エネ計:約19.1%)

LCOEで最安の陸上風力はわずか1.3%、太陽光も4.1%。一方、LCOEでは中位以上の火力が7割超を占めています。「最も安い電源」と「最も使われている電源」が一致しない──これがコスト序列と普及のギャップです。

なぜギャップが生まれるのか ── LCOEは「いつ発電できるか」を測らない

理由は、LCOEが平均コストだけを見て、発電のタイミングを測らない指標だからです。太陽光は昼だけ、風力は風次第でしか発電できません。需要は夜も止まらないのに、安い再エネは「必要なときに必ず出せる」わけではないのです。一方、火力は燃料さえあれば出力を調整でき、需要に合わせて供給できます。だから、コストが高くても「使える電源」として主役を続けています。

東京電力エリアでは2026年3月に管内で初めて再エネの出力制御(発電を一時的に止める措置)が実施されました。安い再エネが増えても、変動を吸収できなければ、せっかくの電気を捨てることになります。

ギャップを埋める鍵 ── 系統用蓄電池

このギャップを埋めるのが系統用蓄電池です。安い再エネが余るときに充電し、足りないときに放電する。これにより、変動する再エネを「必要なときに使える電力」へ変換できます。つまり、再エネのコストが安くなるほど、その安さを実際に活かすための蓄電池の価値が高まるという関係です。

蓄電池はこの調整の対価を、卸電力市場の裁定・容量市場・需給調整市場から得ます。その経済性の見方は、解説「LCOEと蓄電池の経済性」で詳しく扱っています。

まとめ

LCOEで最安の再エネが、日本ではまだ主役になれていない。その差は「コストの低さ」ではなく「変動性」にあります。安い再エネを主力電源に変えるための装置が系統用蓄電池であり、再エネ拡大と蓄電池導入は同じコインの裏表です。電源別コストと電源構成の詳しいデータは、データ面の解説(Insight #74「LCOE×電源構成」)も参照してください。