水噴霧消火設備(Water Spray System)は、消防用水を細かい粒子状(一般に粒径0.1〜1mm程度)に噴霧して、火災対象物の冷却および空気との酸素遮断により消火する固定式消火設備である。消防法施行令で対象施設や設置基準が定められており、蓄電所のリチウムイオン電池火災対応の有力消火方式の一つとして注目されている。

消火メカニズムは、(1)冷却効果(水の蒸発潜熱2,260kJ/kgによる急速な熱奪取)、(2)酸素遮断(噴霧された水蒸気層が酸素供給を遮断)、(3)希釈効果(可燃性ガスの濃度低下)、(4)熱輻射遮断(隣接設備への延焼防止)、の4つが主要効果である。一般的な消火栓・スプリンクラーと比較して、水量を抑えつつ効果的な消火が可能であり、屋内・屋外両方の用途に対応できる。

蓄電所への適用論点は、(a)リチウムイオン電池火災への有効性(特にLFPセル:水適合性高く、熱暴走連鎖抑制効果)、(b)電気設備への適用上の絶縁性能(電圧階級別の安全離隔距離)、(c)消火後の処分(汚染水・残存電解液の処理)、(d)系統設備への二次損害防止、(e)水源確保(消防水利容量、加圧ポンプ仕様)、などである。NMC系電池では水との反応リスクから注意が必要だが、LFP系では水冷却が有効とする実証研究が増加している。

関連規格・基準は、(i)消防法施行令第14条(水噴霧消火設備の設置義務)、(ii)NFPA 15(米国の水噴霧消火設備基準)、(iii)NFPA 855(蓄電システム設置基準、消火方式選択ガイド)、(iv)消防予第125号通知(2023年9月、リチウムイオン電池蓄電所評価)、で詳細が定められている。蓄電所の消火方式選択は、ガス系消火(HFC-227ea、Aerosol、CO2)、フォーム消火、水噴霧消火、ハイブリッド方式の組み合わせから、サイト固有条件・電池化学種・経済性を踏まえて決定される。日本では水噴霧と局所ガス消火の併用方式が増加しつつある。

蓄電所業界では、本技術領域の継続的な進化への対応が事業競争力の決定要因です。AI・デジタルツイン基盤の活用、サイバーセキュリティ強化(IEC 62443等)、サーキュラーエコノミー対応、メーカー・第三者試験機関・業界団体との連携、国際標準化への参画が、技術上の競争力・社会的信頼・運用継続性を支える重要な戦略要素となります。

国際的には、IEC・IEEE等の国際標準化機関での規格策定、グローバル製造・運用事業者間の技術連携、新興市場(東南アジア・中東・アフリカ等)への展開機会拡大が進展しています。日本企業にとって、本技術領域での研究開発投資の継続、スタートアップ・大学・国立研究機関との産学連携、特許戦略・知財管理の高度化、海外実証案件への参画が、グローバル競争力確保の重要要素です。経済安全保障・サプライチェーン国産化政策の中で、本技術の戦略的位置付けは中長期的にますます重要となります。

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主な出典・参考情報

  • IEC(国際電気標準会議)規格群(IEC 62933、IEC 62619、IEC 61850等)
  • IEEE(米国電気電子学会)標準(IEEE 1547、IEEE 2030.5等)
  • JIS(日本産業規格)電気・電池関連規格
  • UL認証規格(UL 9540、UL 9540A、UL 1973等)
  • 各メーカー製品仕様書・技術資料
  • NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)技術ロードマップ