電池の二次利用(Second-life Battery、Reuse)は、EV車載電池等の初期用途で容量低下した蓄電池を、定置型蓄電システム(住宅用、商業施設用、系統用)等の別用途に転用する取り組みで、循環経済(Circular Economy)の重要構成要素として急成長している。「セカンドライフ」「リユース蓄電池」「Repurposed Battery」とも呼ばれる。

EV車載電池は、容量が初期の70〜80%まで低下するとEV用途では性能不足となるが、(1)応答速度、(2)サイクル寿命の残存、(3)安全性、は据置用蓄電池として十分な水準を保っているケースが多い。これを定置用に転用することで、(a)原材料採掘・新規製造のCO2排出削減(LCA上のCO2削減効果20〜40%)、(b)コスト削減(新品比30〜50%)、(c)廃棄物発生抑制、(d)資源循環の実現、(e)EV普及加速の促進(電池残存価値向上で初期EV購入コスト低減)、が期待される。

主要な二次利用シナリオは、(i)住宅用蓄電池への転用(家庭用4〜10kWh級)、(ii)商業施設・事業所のBCP用蓄電池、(iii)EV充電ステーションのバッファ電池、(iv)小規模系統用蓄電池(数MWh級)、(v)地域マイクログリッドの中核蓄電池、(vi)離島・遠隔地の独立電源、(vii)防災・避難所用ポータブル電源、(viii)スポーツイベント・建設現場の仮設電源、で多様化している。

主要な事業者・取り組みは、(A)国内:日産・住友商事JV「4Rエナジー」(日本リユース市場のパイオニア、累計実績豊富)、トヨタ・住友商事「協創」事業、ホンダ・米Redwood Materials連携、(B)海外:中国B-Quik(CATLグループ)、独BetterRe、独Voltfang、米Smartville、米Connected Energy、米B2U Storage Solutions、(C)日系メーカー連携:パナソニック・テスラ協業、(D)研究機関:産業技術総合研究所(AIST)、東京大学、京都大学、で活動が活発化している。

制度・規制面の動向は、(i)2024年に経産省・環境省合同で「使用済み蓄電池の再利用・リサイクル制度検討会」発足、(ii)EU 2027年〜のバッテリー規則(2023/1542)でリサイクル素材含有率規制・LCA情報開示・バッテリーパスポート義務、(iii)日本のバーゼル条約適合(国際輸送規制)、(iv)消防法・建築基準法の安全性基準、(v)製品評価技術基盤機構(NITE)の安全性評価協力、(vi)2023年12月の「蓄電池産業戦略フォローアップ」で循環経済推進が強調、で制度整備が加速している。

二次利用市場の課題は、(a)残存寿命予測の不確実性(個体差ばらつき大)、(b)安全性評価基準(火災リスクの新品比較)、(c)保証スキームの未確立、(d)物流・通関規制、(e)バッテリーパスポート制度の整備、(f)リユース vs リサイクルの優先順位(材料採掘抑制と素材回収のバランス)、(g)品質試験・選別プロセスの標準化、(h)需要・供給のマッチング、(i)保険・融資の引受基準整備、で継続的な業界・行政協働が必要である。2030年代以降のEV大量退役期に、二次利用市場は数十GWh〜100GWh級への成長が見込まれており、蓄電池業界の戦略的成長領域となる。

国際的には、IEC・IEEE等の国際標準化機関での規格策定、グローバル製造・運用事業者間の技術連携、新興市場(東南アジア・中東・アフリカ等)への展開機会拡大が進展しています。日本企業にとって、本技術領域での研究開発投資の継続、スタートアップ・大学・国立研究機関との産学連携、特許戦略・知財管理の高度化、海外実証案件への参画が、グローバル競争力確保の重要要素です。経済安全保障・サプライチェーン国産化政策の中で、本技術の戦略的位置付けは中長期的にますます重要となります。

主な出典・参考情報

  • IEC(国際電気標準会議)規格群(IEC 62933、IEC 62619、IEC 61850等)
  • IEEE(米国電気電子学会)標準(IEEE 1547、IEEE 2030.5等)
  • JIS(日本産業規格)電気・電池関連規格
  • UL認証規格(UL 9540、UL 9540A、UL 1973等)
  • 各メーカー製品仕様書・技術資料
  • NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)技術ロードマップ