プロジェクトマネージャー(PM:Project Manager)は、プロジェクトの計画・実行・統制・終結を担う責任者で、目標達成(QCD:Quality, Cost, Delivery)、ステークホルダー管理、リスクマネジメント、チーム運営の総合責任を負う。蓄電所開発・建設プロジェクトでは、用地取得から運開までの3〜5年に及ぶ複雑な工程を統括する中核要員として、事業の成否を左右する戦略的役割を担う。

蓄電所PMの主要責任領域は、(1)プロジェクト計画策定:WBS(Work Breakdown Structure)、スケジュール、予算、リスクレジスター、(2)チーム編成・運営:内部チーム(事業開発、技術、財務、法務)、外部パートナー(EPC、コンサル、行政書士)、(3)契約管理:用地賃貸借契約、EPC契約、O&M契約、PPA、融資契約、(4)行政手続:用地取得(地目変更、開発許可)、系統連系(接続検討、契約申込)、補助金申請、消防・建築確認、(5)リスク管理:技術・市場・法規・財務・地政学リスクの統合管理、(6)コミュニケーション:株主・経営層・レンダー・地域住民・自治体への報告、(7)品質管理:仕様書管理、検査計画、試運転、(8)変更管理:仕様変更、スケジュール変更、コスト変更、(9)プロジェクト完了:運開、成果物引渡、教訓抽出、と多岐にわたる。

必要スキル・経験は、(a)電力業界知識(電気事業法、系統連系、市場制度)、(b)電池技術知識(リチウムイオン化学、BMS、PCS)、(c)プロジェクトマネジメント手法(PMBOK、PRINCE2、アジャイル)、(d)契約・法務(民法、電気事業法、不動産関連法)、(e)財務・会計(事業性評価、PF構造、資本予算)、(f)リスクマネジメント(FMEA、HAZID、定量的リスク評価)、(g)リーダーシップ(多様なステークホルダー調整、チーム動機付け)、(h)コミュニケーション(社内外、技術者と非技術者、日本語と英語)、(i)デジタル活用(プロジェクト管理ツール、データ分析)、(j)異文化対応(中国系・韓国系・欧米系サプライヤー)、で多面的である。

関連する資格・認定は、(i)PMP(Project Management Professional、PMI認定)、(ii)プロジェクトマネージャ試験(IPA、情報処理推進機構、国家試験)、(iii)電気主任技術者(第1種・第2種)、(iv)建設業のPM経験、(v)海外プロジェクト経験、(vi)MBA・PE資格、で多様な背景を持つ人材が活躍する。

蓄電所業界のPM人材市場の特徴は、(A)電力業界・建設業界・コンサル業界からの人材流入、(B)グローバル人材の重要性増大(中国・韓国メーカーとの調達折衝)、(C)長期キャリアパスの確立途上、(D)専門教育プログラム不足、(E)報酬水準の上昇傾向、(F)女性・若手の参画拡大、で人材育成・確保が業界の重要課題となっている。本サイト「BESS-NET」も、業界のPM人材育成・キャリア情報提供を編集の一翼として位置付ける方針である。

グローバル展開の観点では、米国・欧州・東南アジア・中東等の海外市場展開機会、海外電池メーカー・PCSメーカー・運用事業者・インフラファンドとの戦略提携、国際標準化機関(IEC・IEEE・ISO)への参画、海外プロジェクトファイナンスの組成、各国規制(FERC・NFPA 855・EU電池規則等)への適合が、中長期事業戦略の重要要素です。日本企業の海外展開支援として、JBIC・JICA・JOGMEC等の公的機関との連携も活用が拡大しており、グローバル蓄電所市場での日本企業のプレゼンス確立が、業界の中長期成長を支えます。

主な出典・参考情報

  • 各社IR資料・有価証券報告書・統合報告書
  • 業界団体資料(JESIA、JPEA、JWPA、電池工業会等)
  • BloombergNEF・IHS Markit S&P Global・Wood Mackenzie等の調査レポート
  • 経済産業省・資源エネルギー庁 産業政策資料
  • IEA(国際エネルギー機関)World Energy Outlook
  • TCFD・ISSB・GRI等のサステナビリティ情報開示基準