ストラクチャード・ファイナンス(Structured Finance)は、事業資産のキャッシュフローを担保とする高度な金融組成手法の総称で、プロジェクトファイナンス、資産担保証券(ABS:Asset-Backed Securities)、CLO(Collateralized Loan Obligation)、シンセティック・ファイナンス等を含む包括的な金融カテゴリーである。蓄電所事業のような長期資本集約型プロジェクトでは、複雑なリスク・キャッシュフロー特性を金融市場で効率的に処理するため、ストラクチャード・ファイナンスの活用が一般化している。
主要な手法・スキームは、(1)プロジェクトファイナンス(PF):単一プロジェクトのキャッシュフローを担保とするノンリコース融資、SPC(特別目的会社)介在、(2)資産流動化:稼働中の蓄電所事業を信託受益権・SPC株式に転換し、機関投資家に売却(インフラファンド組成)、(3)グリーンボンド・蓄電池専用ボンド:再エネ・脱炭素プロジェクト向け債券発行、(4)プライベートエクイティ(PE):戦略投資家の持分投資、(5)メザニンファイナンス:劣後ローン・優先株を組み合わせたハイブリッド調達、(6)リース・SLB(Sale and Leaseback):機器のオフバランス処理、(7)レンダー・ファンド・コンソーシアム:複数機関協調、(8)保険連動証券(ILS:Insurance-Linked Securities):災害リスク等の証券化、で多様化している。
蓄電所事業でのストラクチャード・ファイナンス活用は、(a)開発フェーズ:エクイティ+メザニン+PFの組合せ、(b)建設フェーズ:建中ローン、コミットメントライン、(c)COD(Commercial Operation Date、商業運開)後:長期PF、(d)運営期間中:再ファイナンス、レフィナンス(金利低下時の借換)、(e)保有期間中:インフラファンドへの資産売却、(f)ポートフォリオレベル:複数蓄電所のクロスコラテラリゼーション(資産共通担保化)、(g)グローバル展開:海外プロジェクトでの現地通貨ファイナンス、為替ヘッジ、(h)M&A:蓄電所事業者の買収・売却、(i)GXファイナンス:政府支援、グリーンファイナンス政策、で多面的である。
主要プレーヤーは、(i)グローバルレンダー:MUFG、SMBC、みずほ、JBIC、ABN AMRO、ING、BNP Paribas、Crédit Agricole、Société Générale、Citi、JPMorgan、(ii)日系インフラファンド:丸紅・三菱商事系、住友商事系、三井物産系、東京海上グループ、JIA(ジャパン・インフラ・ファンド)、(iii)独立系インフラファンド:BlackRock、Brookfield、Macquarie、I Squared、Stonepeak、KKR、(iv)保険会社:第一生命、明治安田生命、日本生命の機関投資、(v)年金基金:GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)、地方公務員共済、(vi)ESGファンド:Article 9(EU SFDR)対応のサステナブル投資、で多様化している。
論点は、(A)リスク配分:エクイティ・メザニン・シニアの優先順位、(B)金融工学:オプション、CDS(Credit Default Swap)、CLO、(C)会計処理:オンバランス vs オフバランス、IFRS 9・10対応、(D)税務:利子税控除、繰延税金、(E)規制対応:BIS・バーゼルIII、ソルベンシーII、(F)ESG:グリーンボンド原則、トランジションファイナンス、(G)流動性:セカンダリー市場の発達、(H)ガバナンス:契約管理、レポーティング、で複雑である。蓄電所事業の規模拡大・市場成熟に伴い、ストラクチャード・ファイナンスの戦略的活用が事業競争力の重要要素となる。本サイト「BESS-NET」も金融構造の最新動向を継続解説する方針である。
主な出典・参考情報
- 各社IR資料・有価証券報告書・統合報告書
- 業界団体資料(JESIA、JPEA、JWPA、電池工業会等)
- BloombergNEF・IHS Markit S&P Global・Wood Mackenzie等の調査レポート
- 経済産業省・資源エネルギー庁 産業政策資料
- IEA(国際エネルギー機関)World Energy Outlook
- TCFD・ISSB・GRI等のサステナビリティ情報開示基準