OVR(Overvoltage Relay:過電圧リレー)とUVR(Undervoltage Relay:不足電圧リレー)は、それぞれ系統電圧の過上昇・過低下を検知して遮断器に動作信号を送る保護リレーです。系統に大規模な事故・異常(短絡事故、電源脱落、配電線断線等)が発生した際、系統電圧が定格値(66kV連系では66kV、154kV連系では154kV等)から逸脱します。OVR/UVRは、その逸脱を検知して、自設備を系統から解列・保護する役割を担い、系統連系規程の必須要素として、蓄電所のすべての連系設備に設置が義務付けられています。
OVR/UVRの動作原理と整定値は次の通りです。OVR・UVRは、計器用電圧変成器(VT:Voltage Transformer)を介して系統電圧を計測し、設定値(整定値)を超えた状態が一定時間継続した場合に動作信号を出します。標準的な整定例として、UVRは定格電圧の80%以下が0.5〜1.0秒継続、OVRは定格電圧の115%以上が0.1〜0.5秒継続で動作などの設定が用いられます(具体的な数値はエリア・連系電圧階級・設備規模により異なる)。動作するとPCS出力が遮断され、蓄電所は系統から切り離されます。これは自設備保護と系統の事故拡大防止の両方を目的としており、系統側の事故波及を防ぐ重要装置です。電圧解列要件は系統連系規程・JEAC9701等で詳細規定されています。
蓄電所での実務的論点は多面的です。第一に、整定値設計で、電力会社の系統条件・短絡容量・電圧変動レンジを踏まえた整定、連系協議で電力会社と協議決定。第二に、保護協調設計で、上位系・下位系の保護リレーとの動作時間・電圧整定値の協調、選択的事故除去の実現。第三に、誤動作防止対策で、雷サージ・他設備事故時の系統電圧変動による誤動作回避、フィルター・遅延設定・距離リレー併用等の対策。第四に、再連系条件設定で、系統復電後の自動再連系条件(電圧・周波数の正常範囲継続時間等)、過渡的な系統不安定期での再連系回避。第五に、グリッドフォーミング機能との整合で、新型蓄電池機能との保護整定整合、系統電圧支援能力との両立。第六に、デジタル保護リレー(IED)採用で、IEC 61850プロトコル統合、SCADA連携、事故記録自動化、サイバーセキュリティ対応強化。第七に、定期試験・整定値見直しで、年次の動作試験、系統条件変化時の整定値再評価、保安規程に基づく継続管理。
2030年に向けて、OVR/UVR等の電圧保護リレーは再エネ大量導入時代の系統運営で進化が続きます。第一に、再エネ・インバータ電源比率の増加による系統電圧変動の拡大対応で、整定値・動作特性の継続見直し。第二に、グリッドフォーミング機能を持つ蓄電池の本格普及で、電圧支援能力と保護解列要件の精緻なバランス設計。第三に、ROCOFリレー・適応型保護整定の導入で、系統状況に応じた動的整定値調整。第四に、サイバーセキュリティ強化(IEC 62443・IEC 62351準拠)で、デジタル保護リレーの通信暗号化・認証機能・改ざん防止。第五に、AI解析活用で、事故予兆検知・系統状態リアルタイム把握・整定値動的調整。第六に、IEC 61850・国際標準対応の継続進化で、装置間相互運用性・グローバル整合性向上。第七に、HVDC・地域間連系強化に伴う保護システム更新。蓄電所事業者にとって、OVR/UVR等の電圧保護システムの精緻設計・運用は、安全運営・規制遵守・系統運営貢献の基盤として、技術上の重要要素となります。
主な出典・参考情報
- IEC(国際電気標準会議)規格群(IEC 62933、IEC 62619、IEC 61850等)
- IEEE(米国電気電子学会)標準(IEEE 1547、IEEE 2030.5等)
- JIS(日本産業規格)電気・電池関連規格
- UL認証規格(UL 9540、UL 9540A、UL 1973等)
- 各メーカー製品仕様書・技術資料
- NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)技術ロードマップ
関連:実データで確認
蓄電所ネット では、全国9社・6,507変電所の系統空き容量データを統合提供しています。