用地賃借料(Land Lease Fee、Land Rent)は、蓄電所敷地の賃貸借契約に基づく賃料で、所有権取得(買収)に代わる用地確保手段として広く活用される。蓄電所のOPEX(運営費用)の重要要素で、20年級の長期事業期間にわたるキャッシュアウト、立地・契約条件・地価変動の影響を受ける重要パラメータである。
賃借料の標準的な設定方式は、(1)固定賃料方式:契約締結時の合意金額(例:年間100万円/ha)、(2)出力連動方式:MW容量×固定単価(例:100万円/MW/年)、(3)売電収入連動方式:実収益の一定比率(例:3〜5%)、(4)ハイブリッド方式:固定+変動の組合せ、(5)期間別料金方式:建設期間中・運用期間中で異なる、(6)物価連動方式:消費者物価指数等に連動、で多様である。蓄電所市場の成熟に伴い、(a)固定賃料、(b)出力連動、が主流となりつつある。
賃借料水準の主要決定要因は、(a)立地:都市近郊(地価高い)vs 山間部・遠隔地(地価安い)、(b)地目:宅地・雑種地(高い)vs 農地・原野(地目変更の手続コスト含めて評価)、(c)系統連系点近接性:特高変電所からの距離、(d)規制環境:用途地域・規制区域、(e)アクセス道路:大型コンテナ搬入の可否、(f)災害リスク:土砂災害警戒区域・洪水浸水想定区域、(g)地権者の多寡(単独所有 vs 共有)、(h)地域の地価相場、(i)競合事業者の存在、(j)契約期間(20年・25年・30年)、で複合的に決定される。
蓄電所案件の典型的な賃借料水準は、(i)地方圏雑種地・原野(山間部):年間数十万円〜数百万円/ha(数MW規模で年間100〜500万円)、(ii)地方圏農地転用:年間100〜500万円/ha、(iii)都市近郊宅地・雑種地:年間500〜2,000万円/ha、(iv)首都圏・関西圏近郊:年間1,000〜5,000万円/ha、(v)系統連系点近接プレミアム地:上記より20〜50%高、と立地で10倍以上の幅がある。20MW級蓄電所(敷地1〜2ha)で年間賃借料数百万円〜数千万円、20年累計で数千万円〜数億円のキャッシュアウトとなる。
契約条件の論点は、(A)契約期間:蓄電所事業期間(20年)+撤去期間(数年)の合計、(B)更新条件:自動更新 or 再交渉、(C)賃料改定条件:定期改定(5年ごと等)、改定上限・下限、(D)譲渡可能性:プロジェクトファイナンス組成時のSPCへの契約譲渡、レンダー第三者対抗要件、(E)解約条件:早期解約のペナルティ、(F)原状回復義務:事業終了時の機器撤去・整地、(G)地権者の倒産・相続:契約継続性、(H)固定資産税負担:地権者 or 事業者、(I)保険・損害賠償:火災・事故時の地権者への補償、(J)地役権設定:通行権・架線権、(K)借地借家法・民法・商法上の整理、で多面的に検討される。
融資レンダーは、(i)契約期間が事業期間+撤去期間をカバーすること、(ii)レンダーの第三者対抗要件(登記、転貸抵当権設定)、(iii)解約条件の予見可能性、(iv)賃料改定リスクの限定、(v)地権者の信用・継続性、を厳格に審査する。蓄電所事業者は、用地賃借料の長期的なキャッシュフロー影響を踏まえ、買収 vs 賃借の戦略的選択を行う必要があり、案件特性・財務戦略・ファイナンス戦略を総合的に判断する。
グローバル展開の観点では、米国・欧州・東南アジア・中東等の海外市場展開機会、海外電池メーカー・PCSメーカー・運用事業者・インフラファンドとの戦略提携、国際標準化機関(IEC・IEEE・ISO)への参画、海外プロジェクトファイナンスの組成、各国規制(FERC・NFPA 855・EU電池規則等)への適合が、中長期事業戦略の重要要素です。日本企業の海外展開支援として、JBIC・JICA・JOGMEC等の公的機関との連携も活用が拡大しており、グローバル蓄電所市場での日本企業のプレゼンス確立が、業界の中長期成長を支えます。
主な出典・参考情報
- 各社IR資料・有価証券報告書・統合報告書
- 業界団体資料(JESIA、JPEA、JWPA、電池工業会等)
- BloombergNEF・IHS Markit S&P Global・Wood Mackenzie等の調査レポート
- 経済産業省・資源エネルギー庁 産業政策資料
- IEA(国際エネルギー機関)World Energy Outlook
- TCFD・ISSB・GRI等のサステナビリティ情報開示基準