FEMS(Factory Energy Management System、工場エネルギー管理システム)は、工場・製造拠点における電力・熱・ガス・圧縮空気等のエネルギーフローを統合監視・制御し、生産プロセスとの最適化を図るシステムである。EMSの一カテゴリーで、HEMS(家庭)・BEMS(ビル)・CEMS(コミュニティ)と並ぶ重要セグメントである。蓄電所事業との関係では、工場需要家のオンサイト蓄電池統合制御の中核機能となる。

FEMSの主要機能は、(1)エネルギーモニタリング(電力・熱・ガス・圧縮空気の使用量計測、設備別・工程別・時間別の見える化)、(2)需要予測(生産計画・気象データに基づく需要予測モデル)、(3)最適運転制御(生産機器の稼働スケジュール最適化、ピークシフト、デマンドレスポンス)、(4)蓄電池統合制御(充放電スケジュール、SOC管理、市場応札)、(5)自家発電制御(コジェネ、PV、燃料電池の出力最適化)、(6)省エネ施策評価(投資効果・CO2削減効果の継続評価)、(7)電力契約最適化(基本料金・電力量料金の最適化、デマンド制御)、(8)外部システム連携(生産管理システムMES、ERPシステム)、(9)報告(省エネ法、温対法、ESG情報開示)、で多機能を統合する。

蓄電所との連携の論点は、(a)需要ピークシフト:高料金時間帯の蓄電池放電によるピークカット、低料金時間帯の充電、(b)デマンドレスポンス参加:容量市場発動指令電源・需給調整市場でのリソース提供(VPPアグリゲーター経由)、(c)BCP対応:停電時の重要負荷バックアップ、(d)再エネ自家消費最大化:屋根置きPV発電量の自家消費+蓄電池時間シフト、(e)24/7マッチング:時間帯別再エネ消費の達成支援、(f)力率改善:PCS無効電力制御による基本料金低減、(g)コーポレートPPA管理:時間帯別需給管理、と多面的である。

主要ベンダー・製品は、(i)海外勢:Siemens(SIMATIC EMS)、Schneider Electric(EcoStruxure)、ABB(Ability EMS)、Honeywell Forge、Rockwell Automation、(ii)国内勢:日立(HiPAM)、三菱電機(MELSEC)、富士電機、東芝、横河電機、安川電機、(iii)再エネ・蓄電池特化:ENERES、エナリス、自然電力、東芝ESS、(iv)クラウド型SaaS:エナジースタンダード、ファミリーネットジャパン、エネがえる、で多様な選択肢がある。

2030年代に向けて、(A)AI・機械学習統合の高度化(生産計画・需要予測精度向上)、(B)5G/IoTによる工程センサーの拡充、(C)デジタルツイン化、(D)GX対応(CO2排出量算定・削減)、(E)サイバーセキュリティ(IEC 62443対応)、が進展する見通しで、工場需要家のFEMS-蓄電所連携は、蓄電所事業の新たな成長領域として注目されている。

国際的には、IEC・IEEE等の国際標準化機関での規格策定、グローバル製造・運用事業者間の技術連携、新興市場(東南アジア・中東・アフリカ等)への展開機会拡大が進展しています。日本企業にとって、本技術領域での研究開発投資の継続、スタートアップ・大学・国立研究機関との産学連携、特許戦略・知財管理の高度化、海外実証案件への参画が、グローバル競争力確保の重要要素です。経済安全保障・サプライチェーン国産化政策の中で、本技術の戦略的位置付けは中長期的にますます重要となります。

主な出典・参考情報

  • IEC(国際電気標準会議)規格群(IEC 62933、IEC 62619、IEC 61850等)
  • IEEE(米国電気電子学会)標準(IEEE 1547、IEEE 2030.5等)
  • JIS(日本産業規格)電気・電池関連規格
  • UL認証規格(UL 9540、UL 9540A、UL 1973等)
  • 各メーカー製品仕様書・技術資料
  • NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)技術ロードマップ