中央給電指令所(CLDC:Central Load Dispatch Center、中給)は、一般送配電事業者の電力系統の中枢制御施設で、エリア全体の電力需給バランス調整、発電所への出力指令、系統運用の司令塔として24時間365日稼働する。「中給」「中央給電所」「給指」とも略称され、電力会社の系統運用機能の中核を担う最重要施設である。

主要機能は、(1)需給管理:エリア需要予測、発電所出力指令、需給バランス調整、(2)周波数調整:エリア周波数(50Hz東日本、60Hz西日本)の維持、AGC(Automatic Generation Control)信号送出、(3)電圧調整:基幹系統電圧の維持、無効電力調整、(4)系統監視:基幹系統の常時監視、混雑検出、保護動作監視、(5)事故対応:系統故障時の緊急対応、復旧操作、(6)連系線潮流管理:エリア間連系線の潮流調整、(7)他事業者連携:OCCTO(電力広域的運営推進機関)との連携、隣接エリアとの協調、(8)市場連動:JEPX・需給調整市場・容量市場との運用整合、(9)大停電予防:ブラックアウト対策、(10)系統復旧:停電時の復旧計画実行、で多岐にわたる。

主要設備・システムは、(a)SCADA(Supervisory Control and Data Acquisition):系統全体の遠隔監視・制御、(b)EMS(Energy Management System):需給最適化、市場応札連動、(c)通信ネットワーク:専用光ファイバ、衛星バックアップ、(d)AGC:発電所への出力調整信号自動送出、(e)アラーム・ロギング:警報・運転履歴の継続記録、(f)GIS(Geographical Information System):地理空間ベースの系統表示、(g)シミュレーター:系統運用訓練、緊急対応シミュレーション、(h)災害対応設備:非常用電源、耐震設計、(i)サイバーセキュリティ:IEC 62443対応、で構成される。

蓄電所事業との関係は、(i)需給調整指令:中給からの調整指令を蓄電所が応動、(ii)出力制御:再エネ大量接続地区での出力抑制指令、(iii)混雑処理:ノンファーム接続案件への抑制指令、(iv)容量市場発動指令:需給ひっ迫時の発動、(v)AGC信号応答:一次調整力(GF)・二次調整力(LFC)の自動応答、(vi)テレメータリング:蓄電所のリアルタイム運転情報(出力、SOC、SOH)を中給で監視、(vii)緊急時の系統切離し:中給指令による接続解除、(viii)系統復旧支援:蓄電所のブラックスタート支援、で多面的な連動関係を持つ。

各電力会社の中給配置は、(A)東京電力PG:東京中給(新宿)、神奈川中給、(B)関西電力送配電:大阪中給、(C)中部電力PG:名古屋中給、(D)東北電力NW:仙台中給、(E)九州電力送配電:福岡中給、(F)北海道電力NW:札幌中給、(G)四国電力送配電:高松中給、(H)中国電力NW:広島中給、(I)北陸電力送配電:富山中給、(J)沖縄電力:那覇中給、で各エリアの中核を担っている。

2030年代に向けた中給の進化方向は、(i)再エネ大量導入対応の高度化(PV・風力出力予測、機械学習連携)、(ii)系統慣性低下対応(仮想慣性、Grid-Forming Inverter制御)、(iii)デジタルツイン化(系統全体のリアルタイム3Dモデル)、(iv)AI・自律運用(一部運用判断のAI化)、(v)サイバーセキュリティ強化、(vi)ゾーン別ノーダル価格制度(LMP)への対応、(vii)国際連携(東アジア超電力グリッド構想等)、で継続的な高度化が進展する見通しである。蓄電所事業者にとって、中給の運用ルール・指令信号への適切な応答能力は、長期事業の安定運営の基盤となる。

主な出典・参考情報

  • IEC(国際電気標準会議)規格群(IEC 62933、IEC 62619、IEC 61850等)
  • IEEE(米国電気電子学会)標準(IEEE 1547、IEEE 2030.5等)
  • JIS(日本産業規格)電気・電池関連規格
  • UL認証規格(UL 9540、UL 9540A、UL 1973等)
  • 各メーカー製品仕様書・技術資料
  • NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)技術ロードマップ