LMO(Lithium Manganese Oxide:マンガン酸リチウム)は、リチウムイオン電池の正極活物質の一つで、化学組成LiMn2O4を基本とするスピネル構造の材料です。1990年代から商用化が進み、コバルト価格高騰・資源リスク回避の観点から一時期注目されましたが、現在は系統用蓄電池ではNCM(ニッケル・コバルト・マンガン)系・LFP(リン酸鉄リチウム)系が主流で、LMOは特定用途・複合材料・廉価帯での使用が中心となっています。

LMOの主要な技術特性は次の通りです。第一に、コスト面で、コバルト不使用・マンガン主体のため、原材料コストが比較的低い。第二に、安全性で、熱安定性が比較的高く(NCM系より熱暴走耐性が良好)、過充電・過熱時の挙動が比較的緩やか。第三に、出力特性で、内部抵抗が低く高出力放電・急速充電に強い。第四に、課題面で、エネルギー密度が比較的低い(150Wh/kg程度、NCMの200〜250Wh/kgと比較)、サイクル寿命が比較的短い(500〜1000サイクル)、高温下でマンガン溶出による劣化が顕著。第五に、複合化で、LMO単独ではなく、LMO+NCMまたはLMO+NCAのブレンド使用で出力・寿命・コストのバランスを取るケースが多い。第六に、用途で、ハイブリッドEV(HEV)・小型電動工具・低速電動車両等の特定用途で使用。

蓄電所事業との関係は限定的ですが、文脈ごとに違いがあります。第一に、系統用蓄電所では、LFP(コスト・安全性・寿命・サイクル耐久性)またはNCM/NCA(エネルギー密度)が主流で、LMO単独使用は稀。第二に、ブレンド正極(LMO+NCM)として、特定の高出力短時間放電用途(一次調整力等)で採用されるケース。第三に、リユース電池市場(自動車から系統用への二次利用)では、HEV用LMOブレンド電池が再利用されることがあります。第四に、研究開発レベルでは、LMO系の改良(改質LMO、表面コーティング、構造最適化等)で寿命・性能向上を狙う研究が継続中。第五に、特殊用途として、寒冷地用途・極端な急速充放電要件等で、LMOブレンドが特定の優位性を発揮する場面があります。

2030年に向けて、LMO関連の技術進化と市場動向は次のように展開する見通しです。LFPとNCMの主流化が継続する一方、コバルト・ニッケル価格・サプライチェーンリスクへの対応として、LMO・マンガン系材料の研究開発は継続。改質LMO・LMO-NCA高エネルギー密度系・MnO2系(リチウムマンガン酸化物の派生)等の次世代材料、ナトリウムイオン電池でのマンガン系正極(NaMnO2等)の系統用途展開、リサイクル材料活用拡大などが進展領域です。蓄電所事業者にとって、LMOは主要選択肢ではないものの、リユース電池・特殊用途・将来の技術進化の文脈で関連知識を持つことが、技術進化の見通しに役立ちます。

国際的には、IEC・IEEE等の国際標準化機関での規格策定、グローバル製造・運用事業者間の技術連携、新興市場(東南アジア・中東・アフリカ等)への展開機会拡大が進展しています。日本企業にとって、本技術領域での研究開発投資の継続、スタートアップ・大学・国立研究機関との産学連携、特許戦略・知財管理の高度化、海外実証案件への参画が、グローバル競争力確保の重要要素です。経済安全保障・サプライチェーン国産化政策の中で、本技術の戦略的位置付けは中長期的にますます重要となります。

国際的には、IEC・IEEE等の国際標準化機関での規格策定、グローバル製造・運用事業者間の技術連携、新興市場(東南アジア・中東・アフリカ等)への展開機会拡大が進展しています。日本企業にとって、本技術領域での研究開発投資の継続、スタートアップ・大学・国立研究機関との産学連携、特許戦略・知財管理の高度化、海外実証案件への参画が、グローバル競争力確保の重要要素です。経済安全保障・サプライチェーン国産化政策の中で、本技術の戦略的位置付けは中長期的にますます重要となります。

主な出典・参考情報

  • IEC(国際電気標準会議)規格群(IEC 62933、IEC 62619、IEC 61850等)
  • IEEE(米国電気電子学会)標準(IEEE 1547、IEEE 2030.5等)
  • JIS(日本産業規格)電気・電池関連規格
  • UL認証規格(UL 9540、UL 9540A、UL 1973等)
  • 各メーカー製品仕様書・技術資料
  • NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)技術ロードマップ