LFP(Lithium Iron Phosphate、リン酸鉄リチウム)は、正極材にリン酸鉄リチウム(LiFePO₄)を用いるリチウムイオン電池の一種で、現在の系統用蓄電池(BESS)の主流化学です。NMC(ニッケルマンガンコバルト)・NCA(ニッケルコバルトアルミ)と比較して、コバルト・ニッケル不使用、熱暴走発生温度が高い(260℃前後)、サイクル寿命長い(4,000〜6,000回)、価格が安い、という特徴があり、定置型蓄電池の標準として急速に普及しています。
LFP の主要メーカーは中国勢が圧倒的で、CATL・BYD・EVE Energy・Gotion High-Tech・REPT BATTERO・Sunwoda 等が世界シェアの大半を占めます。コンテナ型 BESS 製品(Tesla Megapack 3、CATL EnerC/EnerC+、Sungrow PowerTitan、Wärtsilä Quantum、Fluence SmartStack 等)はほぼ全て LFP を採用。日本勢では GS ユアサが 2GWh/年 の量産投資を経済安全保障推進法に基づき認定取得し、2028年10月の供給開始を予定しています。
LFP の課題は、(1) NMC・NCA と比べてエネルギー密度がやや低い(150〜180Wh/kg)、(2) 低温時の出力低下が大きい、(3) 充電末端の電圧曲線が平坦で SOC 推定が難しい、(4) 中国メーカーへの依存度が高く経済安全保障上の論点、です。日本市場では国産 LFP 量産化が業界戦略上の重要課題で、GS ユアサに加えてパナソニック・東芝なども参入を検討しています。
2030年に向けて、LFP は系統用・低圧リソース・EV(中国・欧州)の主流として地位を固めつつ、ナトリウムイオン電池との価格競争・全固体電池との性能競争の構図に入ります。EU 電池規則(2027年施行)で電池パスポート義務化、IRA(米国)で国産・FTA国生産優遇、日本では経済安全保障推進法でサプライチェーン国産化、と各国の政策環境が業界を大きく動かしています。
主な出典・参考情報
- 経済産業省 資源エネルギー庁 公開資料
- OCCTO 広域系統運用情報
- 各社IR資料・プレスリリース
- 業界団体資料(電池工業会、JESIA、JPEA、JWPA等)
- BloombergNEF・IHS Markit S&P Global・Wood Mackenzie 等の調査レポート