1. グロスビディングの制度概要
グロスビディングは、旧一般電気事業者が自社保有電源の電力を一旦JEPXスポット市場に売却し、同量を買い戻す自主的取組。形式上は市場取引を経由することで、JEPX市場の流動性向上を目的とする。2017年頃から本格化。
2. 制度の背景
- (A) 電力小売全面自由化:2016年4月の制度変更
- (B) JEPX流動性不足:旧一電の市場非参加で取引量が限定
- (C) 新電力支援:電源調達難の緩和
- (D) 価格透明性向上:市場価格の参照価値向上
3. 蓄電池ビジネスとの関係
グロスビディングはJEPXスポット市場の取引量を見かけ上拡大していたが、実需給と市場価格の乖離を生じる場合があった。蓄電池のJEPXアービトラージ収益は市場価格ボラティリティに依存するため、グロスビディングの動向は重要な背景情報。
4. 廃止・縮小の議論
(1)需給調整市場本格運用:2024年度開始で別途流動性確保、(2)容量市場本格運用:2024年度開始でkW容量取引が成立、(3)長期脱炭素電源オークション:新規電源の長期固定収入確保、(4)同時市場検討:2026年度開始で市場機能再編。これらによりグロスビディングの役割低下が認識された。
5. 市場機能の進化
(1)JEPXスポット市場・時間前市場の流動性向上、(2)需給調整市場の本格運用、(3)容量市場の本格運用、(4)ベースロード市場の継続、(5)非化石価値取引市場の拡大、(6)同時市場開始予定。これらの「制度的市場機能」が、自主的取組であるグロスビディングを置換しつつある。
6. 蓄電池事業者への影響
グロスビディング廃止・縮小は、JEPX価格形成のメカニズムを変える。蓄電池のアービトラージ機会は、純粋な需給バランスにより形成される価格ボラティリティを反映するようになる。EMS選定でのJEPX価格予測モデルの再構築が必要となる場合がある。
7. 業界への示唆
(1)JEPX価格形成メカニズムの変化を継続監視、(2)EMS価格予測モデルの再構築、(3)市場機能の制度的進化を理解、(4)2026年同時市場開始の影響予測、(5)需給調整市場・容量市場との連動運用最適化、(6)旧一電の市場参加戦略の動向把握。