1. 経過措置の制度背景
容量市場のメインオークションは2020年度に初めて実施され(対象実需給年度は2024年度)、2024年度から実需給が始まった。経過措置は「小売電気事業者の競争環境に与える影響を、一定期間緩和するための措置」で、約定価格ではなく容量確保契約金額から控除する。対象となるのは、契約電源が2010年度末までに建設された電源(電源等の経過年数に応じた控除)、又は各エリアにおいて応札価格が当該エリアの約定価格に入札内容に応じた控除額係数を乗じた価格以下の電源(入札内容に応じた控除)で、いずれも電源等の区分が安定電源又は変動電源(単独)の場合に限られる。適用は対象実需給年度2024年度から2029年度まで。
2. 経過措置の対象
- (A) 電源等の経過年数に応じた控除:契約電源が2010年度末までに建設された電源が対象。控除率は対象実需給年度2025年度7.5%・2026年度6.0%・2027年度4.5%・2028年度3.0%・2029年度1.5%(対象実需給年度2024年度は、メインオークション分に控除率42%、調達オークション分に電源等の経過年数に応じた控除率9%)
- (B) 入札内容に応じた控除:各エリアにおいてメインオークション応札時の応札価格が、当該エリアの約定価格に入札内容に応じた控除額係数を乗じた価格以下の電源が対象。控除額係数は対象実需給年度2025年度82.0%・2026年度85.6%・2027年度89.2%・2028年度92.8%・2029年度96.4%(対象実需給年度2024年度は、調達オークション分に78.4%)。控除額は約款で「個々の電源の約定価格 × 契約容量 ×(1-経過措置控除係数)」、経過措置控除係数は「電源等の経過年数に応じた控除額係数×入札内容に応じた控除額係数」と定められており(入札内容に応じた控除額の対象でない電源の場合、入札内容に応じた控除額係数は100%)、控除額係数は控除される割合そのものではない
3. 蓄電池の位置づけ
メインオークションの電源等の区分は安定電源・変動電源(単独)・変動電源(アグリゲート)・発動指令電源の4つで、蓄電池は安定電源(「蓄電池(1 日 1 回以上連続3時間以上の運転継続が可能な能力を有するもの。)」)として、また発動指令電源のリソースとして参加できる。長期脱炭素電源オークションはメインオークションとは別に実施されるオークションである。経過措置の控除は電源等の区分が安定電源又は変動電源(単独)の場合に限られる。(A) 電源等の経過年数に応じた控除は2010年度末までに建設された電源が対象のため、これから建設する蓄電所には該当しない。(B) 入札内容に応じた控除は応札価格で対象が決まり建設年の条件はないが、(A)(B) とも対象実需給年度2029年度を最後に廃止され、対象実需給年度2030年度以降の容量確保契約約款には経過措置の定めがない(5節)。対象実需給年度2029年度までの分を安定電源として落札し、応札価格が当該エリアの約定価格に入札内容に応じた控除額係数を乗じた価格以下の蓄電所は、(B) の対象になりうる。長期脱炭素電源オークションの「制度適用期間」は約款の用語の定義で「供給力提供開始年度の翌年度(供給力提供開始年度が2025年度以前となる場合は2027年度)から原則20年間の容量収入を得られる期間」とされており、契約単価は物価・金利変動等に伴い補正される。
4. リクワイアメント要件
リクワイアメントは電源等の区分ごとに定められており、経過措置の適用有無では変わらない。安定電源の実需給期間中のリクワイアメントは「供給力の維持」(実需給年度において、契約電源をアセスメント対象容量以上の供給力を提供できる状態を維持すること)、「発電余力の卸電力取引所等への入札」、「電気の供給指示への対応」(実需給年度の容量停止計画を提出していないコマにおいて、前日以降の需給バランス評価で低予備率アセスメント対象コマに該当すると判断された場合に、属地一般送配電事業者からの電気の供給指示に応じて、ゲートクローズ以降の発電余力を供給力として提供すること)で、非効率石炭火力電源には「稼働抑制」も加わる。実需給期間前は「容量停止計画の調整」と、調整機能を有する場合の「契約の締結」(属地一般送配電事業者と余力活用に関する契約を締結していること)。発動指令電源は実需給年度の2年度前の夏季(7〜9月)又は冬季(12〜2月)に実効性テストを受けることが求められる。
5. 経過措置から本格運用への移行
経過措置の控除は対象実需給年度2029年度を最後に廃止される(約款 附則(2021年7月1日)第2条7項「電源等の経過年数に応じた控除及び入札内容に応じた控除は、実需給期間が2029年度を最後に廃止します。」)。対象実需給年度2030年度以降を対象とする「容量確保契約約款(対象実需給年度:2030年度以降)」には経過措置の定めがなく、2026年度メインオークション(対象実需給年度:2030年度)の募集要綱も「2.容量確保契約金額の算出に関する経過措置(削除)」としている。
6. 業界への示唆
(1) 対象実需給年度2029年度を最後に廃止されるのは「経過措置による容量確保契約金額の控除」であって、電源が市場から退出するわけではない。控除が無くなる分、経過措置の対象だった電源も約定価格どおりの契約金額を受け取ることになる(ただし非効率石炭火力電源の減額率20%は、対象実需給年度2030年度以降の約款にも残る)。(2) 長期脱炭素電源オークションで制度適用期間(原則20年間)の容量収入を得る電源と、メインオークション(契約期間は実需給年度の末日まで)の電源は契約の性質が異なるため、分けて見る。
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