NAS電池(Sodium-Sulfur Battery、ナトリウム硫黄電池)は、正極に硫黄、負極にナトリウムを用いた高温作動型(300℃前後)の二次電池です。日本ガイシ(NGK)が世界で唯一量産する大容量・長時間放電型電池で、容量 1.2〜10MWh 単位のコンテナ型システムが商用展開され、世界で累計 5GWh 超の導入実績があります。
NAS 電池の特徴は、(1) サイクル寿命 4,500回以上(15〜20年運用可能)、(2) 6〜10時間以上の長時間放電が経済的、(3) 高エネルギー密度(リチウムイオン電池比でも遜色ない 100〜150Wh/kg)、(4) ナトリウム・硫黄という資源制約の少ない材料、(5) リサイクル性が高い(材料回収率 98%)、です。一方で課題として、(a) 300℃高温作動のための保温電力消費、(b) 起動時の昇温に時間を要する(1時間程度)、(c) リチウムイオン電池に比べて容量当たりコストが高めで短時間放電用途では非経済的、があります。
蓄電所事業での位置付けは、長時間放電型蓄電池(LDES:Long Duration Energy Storage)の有力選択肢です。リチウムイオン電池が 1〜4時間定格の短〜中時間用途に適するのに対し、NAS 電池は 6時間以上の長時間定格に強みがあり、長期脱炭素電源オークション(LTDC)の20年契約モデルや再エネ大量連系時の調整力供給に向きます。国内では北海道電力・東京電力 PG・東京ガス等が NAS 電池導入実績を持ち、海外では UAE・モロッコ・南アフリカ等の再エネ統合プロジェクトで採用が拡大しています。
2030年に向けて、LDES 市場の浮上に伴い NAS 電池は再注目領域となっています。日本ガイシは生産能力増強を発表し、海外勢ではナトリウム硫黄電池に加えてレドックスフロー電池・水素貯蔵・圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)等の長時間貯蔵技術が並立競争する構図に。日本企業として国際競争での技術優位性確保が、今後の業界戦略上の重要論点となります。
主な出典・参考情報
- 経済産業省 資源エネルギー庁 公開資料
- OCCTO 広域系統運用情報
- 各社IR資料・プレスリリース
- 業界団体資料(電池工業会、JESIA、JPEA、JWPA等)
- BloombergNEF・IHS Markit S&P Global・Wood Mackenzie 等の調査レポート